本年4月1日に,竹田美和前会長の後任として日本結晶成長学会の会長に就任しました.至らぬことが多いと思いますが,どうぞよろしくお願い申し上げます.
日本結晶成長学会は,1974年に創立されて以来39年の歴史を刻み,結晶成長学の基礎から応用までを専門的に取り扱う唯一の学会組織として,産官学の各分野からの支援を受けて,発展を遂げてきました.物理学会や応用物理学会をはじめとして,それぞれの専門の研究者コミュニティで独立に議論されている結晶成長学に関する研究成果を横断的に取扱い,結晶成長をキーワードとする新しいコミュニティを作り,発展させることが本学会に与えられてきた役割であります.この役割は現在でも変わらず,学問領域の多様化が進むなかで,その役割はますます重要になってきていると考えます.
しかしその一方で,社会情勢や産業情勢の大きな変革もあり,本学会も他学会と同様に会員数の減少や運営収支の悪化など,学会運営に当たり極めて厳しい環境におかれるようになってきたことも確かです.竹田前会長の時代からこの問題は顕在化しており,そのリーダーシップのもとにさまざまな改革案が検討され,実行されてまいりました.竹田会長の3年の間に,学会運営は大きく改善されてきたと思いますが,依然としてきびしい環境の中にあります.当面は,竹田会長時代に示された道筋を着実に実現していくことが,本学会の運営健全化への唯一の道であると考えています.会員の皆様へのサービス低下となることがないように,学会執行部としては今後とも最大限の努力を継続することはもちろんですが,会員の皆様のご理解とご協力も不可欠です.よろしくお願い申し上げます.
また,今後日本結晶成長学会では,いくつかの大きなイベントが計画されています.2014年度には,学会創立40周年を迎えますので,記念事業の実施を予定しています.さらに,この年は偶然にも世界結晶年に指定されており,日本学術会議をはじめ,多くの学協会が協力して様々なイベントを開催することになっています.本学会も,これに関連する有力な学会の一つとして,協力することとなっています.一方,すでにアナウンスされておりますように,2016年には名古屋において第18回結晶成長国際会議が開催されます.2001年に京都で開催されて以来の日本での開催であり,準備を進めてまいります.これらのイベントを成功に導くためには,会員の皆さまの強力なご支援が不可欠ですので,こちらもどうぞよろしくお願いいたします.
さて,本学会が生き残ってゆくための学会運営に対する短期的な戦略に加えて,もう少し長期的視点での学会の取るべき研究戦略についてもその大方針を議論しておく必要があると考えています.特に,課題解決型の研究がもてはやされる今日において,学会として基礎研究の分野を守り,いかにして発展させていくかを議論することの重要性はますます増加しています.本学会はすでに創立40周年を迎えます.これは十分に長い歴史と言えますが,学会としての成熟度は,まだまだこれからという面も多々存在します.歴史に甘んじることなく,学会の新たな方向性を差し示すことがますます重要であり,これなしには真の意味での学会の再生と発展はありえないと考えています.理事会のメンバーを中心に学会の将来像を検討し,これを会員の皆様に提示し,学会全体での議論を深めていく地道な努力も必要であると考えています.会員の皆さまの忌憚のないご意見やご提言をお待ちしております.
以上,会長就任にあたり,学会発展のために最大限の努力をはらうことをお約束するとともに,会員の皆さまのご協力をお願いし,ご挨拶といたします.
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